【インタビュー記事】ADHDの特性を活かして、自分に最適な働き方を実現するキャリア設計とは?

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栗元大雅(ハンドルネーム:くりお)は福岡県福岡市出身の29歳。福岡市内の高校を卒業した後、短期大学に入学するも1年半で中退。その後、公務員専門学校で1年間過ごし、晴れて税務職員となる。税務職員として転勤を繰り返す多忙な生活を送る中、2022年から動画編集を趣味で始め、昨年2023年3月に税務署を退職し、フリーランスとして独立。現在はディレクターポジションで動画編集案件をマネジメントしながら、新事業立ち上げのために日々奮闘中。なお「くりお」という名は公務員時代に運営していたブログで本名を伏せるために使用していたものであり、現在もネット上で活動する際の呼び名となっている。

そんなくりおさんに生きるうえで大切にしている考え方や、今やっているお仕事についてインタビューしました。

目次

1. 組織に属さない「自由な働き方」を得るため、動画編集フリーランス・事業家として独立

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公務員(税務職員)になろうと思ったのはなぜですか。

公務員専門学校に通うことを決意したのは、高校卒業後に入学した短期大学を1年半で中退した後でした。当時、高校卒業と同時に始めたバイクが人生の楽しみの大部分を占めていたこともあり、仕事選びの軸に「趣味のバイクを続けられるか」がありました。その際、安定した収入と余暇の時間を確保しやすい公務員という仕事は、当時の私にとって非常に魅力的に映ったのだと思います。

「自由に生きたい」という価値観は今も昔も変わらず思っていることですが、当時の私にとっての自由は「好きなだけバイクに乗る」ことだったので、公務員はその理想に最も近づける職業だと考えていました。また、私はかなりの飽き性で、同じ場所に留まっているのが好きではありません。税務職員は転勤が比較的多く、さまざまな場所での勤務が経験できることも決め手の一つでした。

税務職員として多忙な生活の中で、動画編集を始めたきっかけを教えてください。

動画編集を始めたきっかけは、昔の同僚たちとオンラインゲームで遊んでいたときです。コロナ禍により在宅時間が増えたこともあり、2022年頃から大阪時代の同僚たちとオンラインでFPSゲームをプレイすることにハマりました。その際、趣味で友人とのプレイ動画を自分で編集し、YouTubeに投稿し始めました。そこから1年間は、完全に趣味で動画編集を楽しんでいたと思います。

趣味で動画編集を行う中で、次第にその魅力と可能性に気づき始めました。その後、2023年1月から動画編集のオンラインスクールを受講し、本格的に仕事にするために学習を開始しました。

少しずつ動画編集の仕事もいただけるようになり、十分な見込み客を確保した状態で、独立に至ったのです。公務員としての多忙な日々の中で、動画編集は私にとって貴重なリフレッシュの時間でありながら、新しい挑戦のきっかけにもなりました。当初は、この趣味が自分のキャリアに大きな影響を与えることになるとは全く予想していなかったです。これも全て、自分の好奇心・衝動の賞味期限が切れないうちにチャレンジしたことが大きかったと思います。

2. ADHDと診断され、目の前の「やりたい気持ち」に正直になった【趣味は知的好奇心を満たすこと】

「衝動」「好奇心」というのはくりおさんの行動指針の中でも大部分を占めるように思います。幼少の頃からくりおさんの行動の源泉だったのですか。

そうですね。私がこれまでの人生でさまざまなことに挑戦し続けてきた背景には、常に「知的好奇心を満たしたい」という強い欲求がありました。小さい頃からルーティンワーク(同じことの繰り返し)が苦手で、常に「他の方法はないか?」と考える性格でした。これは社会人になっても変わらず、仕事でも趣味でもさまざまなものに手を出してきました。動画編集を始めたきっかけもちょっとした好奇心が出発点でしたし(笑)。

税務職員として働く中でも自分の苦手なルーティンワークはありましたが、その一方で知的好奇心を満たせる経験も多くあったのは事実です。他の職種よりも経営者層の方々と接する機会が多く、彼らのビジネスに対する考え方や視点を学べたのは私にとって非常に大きな財産でした。

自分の気持ち・欲求に正直になって、すぐにアクションできるのはくりおさんの強みですよね。

裏を返せば「後先考えてない」とも捉えられそうですね(笑)。しかし、税務職員として働き始めて1年ほど経った頃、上司に精神科医に行くことを勧められたんです。他の同期よりも注意力が散漫だったことが原因だったんだと思います。

病院へ行くと、そこで「ADHD(注意欠如多動症)」と診断されました。ADHDと診断されたときは、かなりショックを受けました。じっとしていられない、興味が湧いたことに突っ走ってしまう自分の性格が、診断によって「発達障害」として認識されることに少し戸惑いを覚えたのです。しかし、次第にこの診断が私にとって新たな視点をもたらしてくれるというポジティブな側面があることに気づきました。

それまでは、なぜ自分が一つのことに集中できないのか、なぜ次々と新しいことに興味を持つのかと悩んでいましたが、診断を受けたことでそのすべてが腑に落ちたのです。この診断を通じて、私は「やりたいことをやる」ことが自分にとって最も大切だという結論に至りました。

今では自分の特性を素直に受け入れ、それを活かす方法を見つけられました。自分の好奇心や興味を満たすことが最も大切で、そのために全力を尽くしています。この診断は、自分のキャリアや人生に対する考え方を明確にする、私にとって一つの「転機」となったと思います。

3. 「給料の安定=人生の安定」ではない。自分の子どもに伝えたいある想いとは?

公務員時代の「自由」と、独立した今のくりおさんの「自由」との違いはありますか。

公務員時代、私は「安定した収入と休暇」が自由の象徴だと考えていました。実際、税務職員としての生活は経済的に安定しており、休日も十分に確保されていたと思います。しかし、後にこの「自由」が実際には非常に制約の多いものであることに気づきました。どれだけ給料が安定していても、自分が「〇〇へ行きたい」と望んだときに好きに動けるわけではないからです。仕事をする時間は人生の大部分を占めるもの。ほんとうの意味で自由を手に入れるには、余暇の時間以外の部分でも自由を手に入れる必要があります。そのための手段として「独立」することが必要不可欠でした。

実際、フリーランスとして働くようになってからは、真の意味での自由を実感できています。自分のスケジュールを自分で管理し、やりたいことに全力を注げる環境は、公務員時代には得られなかったものです。もちろん、この自由には責任も伴いますし、簡単なものではありません。しかし、それ以上に自分の選択が結果に直結することの充実感を今は感じられています。

公務員をやめることへの恐怖心はなかったですか。

公務員を辞めることを決意したタイミングでは、恐怖感はほとんどありませんでした。むしろ、「公務員であり続けるリスク」への恐怖心が大きかったと思います。

公務員として働き続けることは、給料の面からは非常に安定しています。しかし、私は公務員はその限られた環境でしか活躍できない人材を育てる温床にもなっているとも考えています。

特に危機感を感じた瞬間として、税務署の副署長が私に「NISAって楽しいの?」と聞いてきたことが挙げられます。税務署は市民がNISAを開始することへ承認を出す仕事をしているにもかかわらず、彼はその内容について何も知らなかったのです。

安定した給料や休みが確保されている状況は一見すると魅力的ですが、それが長期的な意味での安定であるとは限りません。今では、自分で生きていける力を身につけることこそが、本当の安定だと考えています。

しかし、自分で事業を進めることは簡単ではなかったと思います。新しいチャレンジをゼロから自分で考えて実行する中で、どんな苦労がありましたか。

そうですね。ゼロから事業を立ち上げることは苦労の連続でした。例えば、私が運営する「鹿児島∞末広がり会∞」という社会人サークルも、立ち上げ当初は周囲の人から「宗教じゃないの?」「目的がわからないから怪しい」と批判的な意見をもらうこともありました。

このような状況を打破するために、私は一人ひとりの参加者と丁寧に向き合い、信頼関係を築くことに努めました。一見コスパが悪いようにも思える方法ですが、結果的には多くの人々からの信頼を得ることにつながりました。

このようなPDCAを自分一人で考えることは容易ではありませんが、その分やりがいが感じられるので、今の仕事が自分の特性にあっていると実感しています。

実は、私には3歳になる子どもがいます。彼には「会社員や公務員=安定とは限らないから、自分で生き抜く力を身につけることが大切だ」ということを自分の生き方を見せながら伝えたいです。

何度も言うように、公務員は給料や福利厚生の面では非常に安定しています。しかし、それが人生の安定を意味するわけではありません。私が税務署で働いていたときに感じた「公務員以外の働き方を知らないというリスク」にも目を向ける必要があるでしょう。

子どもには「給料の安定=人生の安定」ではないことを伝えたいです。本当の安定とは、自分で生きていける力を身につけることから得られるものだと思います。そのために、私は今も自分の興味や好奇心を追求し続けています。真の自由と充実感を得るための行動は自分で起こす必要があるということを、自分の行動を通して子どもには伝えられればなと考えています。

最後に、今のくりおさんにとっての知的好奇心を満たせることは何ですか。

そうですね…プライベートな面でいうと、ヨーロッパなど、まだ知らない国々を旅してみたいですね。コロナ前は海外をバイクで旅することもあって、本当に多くの刺激を受けました。自由な生活を手に入れられた今だからこそ、その続きをやりたいなーって(笑)

より長期的な目標としては「自分の利益にならないカフェをしたい」なんて考えも密かにあります。秘密基地みたいな身内だけのノリで楽しめるアットホームなカフェを作って、自分の周りの人に幸せをおすそ分けしたいです。

とは言え、知的好奇心を満たすことは単なる趣味や仕事という感じではなく、私の人生全体において大きな意味を持っています。これからも自分の経験やスキルが少しでも周りの人の役に立てるように、そして、自分の好奇心を満たすために働き続けられる自由な環境を作り上げていきたいです。

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